誰かの不機嫌に、心が引っ張られてしまうあなたへ ― 感情の境界線が薄くなる心理
あなたは今、まわりの人が不機嫌だったり、誰かの愚痴を聞いたりしたあとに、どっと疲れてしまうことはありませんか。
自分は何も悪いことをしていないのに、なぜか気持ちが沈んでしまう。
相手の機嫌が悪いと、「もしかして私のせいかな」と考えてしまう。
グループLINEの空気が少し重いだけで、既読をつけるのも怖くなってしまう。
「私だけが我慢すればいい」「私さえ気をつけていれば」と、心のどこかで思っていませんか。
そんなふうに感じたこと、一度はあるのではないでしょうか。
誰かの不機嫌に、心が引っ張られていませんか
会議室で誰かがピリピリしていると、その場の空気だけで疲れてしまう。
友人の愚痴を聞いたあと、しばらく自分の気分まで暗くなってしまう。
家族の機嫌が悪いと、自分の一日の予定まで、なんとなく落ち着かなくなってしまう。
パートナーが無言だと、「何か怒らせるようなことをしたかな」と、何度も考えてしまう。
このように、まわりの感情をまるでスポンジのように吸収してしまう方は、決して少なくありません。
言いたいことがあっても、その場の空気を壊したくなくて飲み込んでしまう。
褒められても、「そんなことないです」とつい否定してしまう。
頼まれごとを断りたいのに、相手をがっかりさせたくなくて、つい引き受けてしまう。
誰かと自分を比べて、「あの人はできているのに、私は」と落ち込んでしまう。
こうした場面に、心当たりがある方も多いのではないでしょうか。
そして、その状態がずっと続くと、心も体も少しずつ疲れがたまっていきます。
これは、心理学では「エンパス」や「共感疲労」と呼ばれる状態に近いものです。
人の気持ちに寄り添う力が強い分だけ、まわりの感情の影響も受けやすくなってしまうんですね。
それだけ、あなたが人の気持ちに敏感で、優しい心の持ち主だということでもあるんです。
それは、決して悪いことではありません。
あなたが悪いわけではありません
まず、はっきりお伝えしたいのは、そのように感じてしまうのは、あなたの性格が弱いからでも、心が未熟だからでもないということです。
まわりの空気を敏感に感じ取れるのは、それだけ人の気持ちに寄り添える力があるということでもあります。
本来はとても優しい資質のはずなのに、それがいつの間にか「相手の感情を自分の感情と同じように扱ってしまう」という形になっていることがあるんです。
言いたいことが言えなかったり、頼まれると断れなかったり、人と比べて落ち込んでしまったり。
そうした場面に心当たりがある方は、もしかすると、相手の感情と自分の感情の境界線が、少し薄くなっているのかもしれません。
境界線が薄いというのは、悪いことではありません。
それだけ、まわりの人を思いやれる心を持っているということでもあるからです。
ただ、その優しさのぶんだけ、自分の心が後回しになりやすい、ということなんですね。
人と比べて落ち込むことも、誰にでもあることです。
特別なことではありません。
私自身も、以前は人に合わせすぎてしまい、思っていることがあっても、その場でうまく言えないことがありました。
押しの強い方にガーッと言われると、とっさに言葉が出てこなくて、意見を言えないまま終わってしまうこともありました。
相手の顔色をうかがいながら、自分の気持ちを後回しにしていた時期もあります。
ですから、その苦しさは、私にもよくわかるつもりです。
あなたが今そう感じているとしたら、それはあなたが弱いからではなく、これまで一生懸命、まわりとの関係を大切にしてこられた証でもあるんです。
「わがままだと思われたくない」「嫌われたくない」という気持ちが、知らず知らずのうちに、自分の意見よりも相手の顔色を優先させてしまうことがあります。
人の顔色をうかがってしまう自分を、「情けない」と責める必要もありません。
なぜ、人の感情をそのまま受け取ってしまうのか
こうした心のクセは、多くの場合、幼いころの経験から作られていきます。
小さいころ、家族の機嫌に敏感でいることが、自分を守るために必要だった、という方もいます。
親が不機嫌なとき、そばにいる子どもは、その空気を敏感に感じ取ります。
「今、機嫌が悪いから静かにしていよう」「怒らせないようにしよう」と、無意識のうちに考えるようになる。
それは、子どもなりに一生懸命、その場を穏やかに保とうとした知恵でもあります。
小さな子どもにとって、親や家族は世界のすべてです。
だからこそ、その機嫌を敏感に感じ取ることが、生きていくための大切な手段になっていたのかもしれません。
「まわりが穏やかであれば、自分も安心できる」と、幼い心が学んでしまうと、大人になってからも、無意識のうちに人の機嫌を観察し続けてしまうんですね。
これは潜在意識の中に刻まれた、いわば生き延びるための知恵のようなものです。
決して悪いものではありません。
ただ、その知恵が今のあなたには、少し重すぎる荷物になってしまっている、ということなんです。
大人になった今のあなたには、もうその手段は必要がなくなっているかもしれません。
それでも、体や心が覚えているパターンは、簡単には消えていかないものなんです。
インナーチャイルドと呼ばれる、幼い頃の自分の気持ちが癒されないまま残っていると、大人になった今も、同じパターンを繰り返してしまうことがあります。
「まわりの機嫌を伺っていないと、自分の居場所がなくなる」という、幼いころに感じた不安が、大人になった今も、心のどこかで静かに働き続けているのかもしれません。
「あなたのせいではなかった」と、今のあなたが、幼いころの自分にそっと伝えてあげることも、心を緩める一歩になります。
潜在意識は、私たちが眠っている間も休まずに働き続けています。
だからこそ、日中に「気をつけよう」と意識するだけでは、根っこにある思い込みまでは届きにくいのです。
だからこそ、頭で理解するだけでなく、心の奥深くにアプローチすることが大切になってくるんですね。
だからこそ、「気をつけよう」と頭で思うだけでは、なかなか変わっていかないのです。
「気をつけよう」と思うだけでは変わりにくい理由
「人の機嫌に振り回されないようにしよう」
そう心に決めても、また同じように疲れてしまう。
そんな経験はありませんか。
これは、あなたの意志が弱いからではありません。
反応そのものが、意識よりも深いところ、潜在意識のレベルで起きているからなんです。
頭でわかっていても、体や心が先に反応してしまう。
たとえば、誰かの声のトーンが少し変わっただけで、心臓がドキッとしたり、体がこわばったりする。
これは、頭で考える前に、体が先に反応してしまっている状態です。
それは、あなたの努力が足りないからではなく、体に染みついた反応のスピードが、頭の理解よりも速いからなんです。
意志の力で乗り越えようとするほど、かえって疲れてしまうことも少なくありません。
だから、言葉で自分に言い聞かせるだけでは、根っこの部分がなかなか変わっていかないんですね。
「もっと強くならなきゃ」「気にしないようにしよう」と、いくら頭で唱えても、潜在意識の奥にある思い込みそのものが変わらない限り、同じパターンを繰り返してしまいます。
気持ちが変わると、行動も変わっていきます
これまで多くの方とお話しさせていただいて、私が一番実感していることがあります。
それは、気持ちが変わると、行動が自然と変わっていくということです。
相手の感情と自分の感情を、心の中でそっと分けられるようになった方は、頼まれごとを断れるようになったり、自分の気持ちを大切にできるようになったりします。
実際に、ご自身の気持ちを整理された方から、こんな声をいただくことがあります。
「自分の気持ちを大切にして、嫌なことを断れるようになりました」
「自分責めがなくなると、こんなに毎日が楽しいのですね」
「こんなに心も体も軽やかでスッキリするんですね」
そんな声を聞かせていただくたびに、この仕事をしていて本当によかったと感じます。
無理に頑張って前向きになろうとするのではなく、心の奥にある思い込みそのものが緩んでいくと、行動は自然とついてくるものなんです。
やりたいことができるようになった、家族まで明るく元気になった、という声を聞くこともあります。
「自分責め」がなくなると、人にも自分にも優しくなれる、という声もよく聞きます。
自分でも気づかずに眠らせていた「やりたい」「言いたい」という気持ちが、少しずつ表に出てくるようになる。
そんな変化を見せていただくことが、私にとって一番うれしい瞬間です。
あなたの気持ちが軽くなれば、まわりの空気に振り回されることも、少しずつ減っていくはずです。
「私なんて」と誰かと比べて落ち込む毎日より、「今日も楽しかった」と一日を終えられる毎日を、あなたにも過ごしてほしいと思っています。
一人で頑張り続けなくて大丈夫です
今日からできる小さな一歩として、誰かの機嫌が悪いと感じたときに、「これは相手の気持ち、これは私の気持ち」と、心の中でそっと分けてみてください。
それだけでも、少しずつ変化は生まれてきます。
ただ、長年しみついたパターンは、自分一人の力だけでは、なかなか変えづらいことも事実です。
言葉で唱えるだけでは届かない、心の奥深くにある思い込みだからこそ、変わりにくいのです。
「気をつけよう」と自分に言い聞かせるだけでは変わらなかったことも、心の奥にある思い込みに気づくところから、少しずつ変わっていくことがあります。
完璧を目指さなくて大丈夫です。
今日できる小さな一歩から、少しずつ始めていきましょう。
まずはプチ体験セッションで、悩みの原因と今の状況を一緒に整理することもできます。
一人で頑張り続けなくて大丈夫です。
一人で「早く変わらなきゃ」と焦らなくても大丈夫です。
あなたのペースで、少しずつで構いません。
どうか、そのままのあなたで大丈夫だと、心のどこかで思い出してください。
あなたが、誰かの不機嫌ではなく、自分自身の穏やかな気持ちで、一日を過ごせますように。